三十代に入ったばかりの頃の私は、まさか自分が薄毛に悩むことになるとは夢にも思っていませんでした。毎朝のセットでは鏡を見ていたはずなのに、変化はあまりにも緩やかで、自分でも気づかないうちに忍び寄っていたのです。ある日、美容室でいつも通り髪を切ってもらった後、美容師さんが後ろ姿を確認するために合わせ鏡を掲げてくれたとき、ふと自分の生え際の輪郭に違和感を覚えました。以前よりも額が広くなったような、あるいはこめかみ付近のラインが角張ってきたような、言葉にできない不安が胸をよぎりました。帰宅して古い写真と現在の自分を何度も見比べましたが、明らかに数年前よりも生え際の両端が奥に引っ込んでおり、髪をかき上げるとそこには産毛すらも弱々しくなった地肌が広がっていました。これが世に言う「M型」の進行なのだと悟った瞬間の、背筋が凍るような感覚は今でも忘れられません。そこから私は、自分の進行パターンを必死に調べるようになりました。専門的な分類では、私の状態はまだ初期のステージ二程度であるようでしたが、放置すればいずれ頭頂部まで繋がってしまうという記述を見て、一刻も早い対策が必要だと確信しました。M字型の恐ろしいところは、正面から自分を見ている分には前髪で隠せてしまうため、本当の深刻さに気づくのが遅れがちな点にあります。私はその後、専門のクリニックでカウンセリングを受けましたが、そこで見せられたハミルトンノーウッド分類の図は、まるで私の未来を予言しているかのようでした。医師からは、前頭部の生え際はホルモンの影響を強く受けやすく、一度完全に後退してしまうと再生させるのに時間がかかるという説明を受けました。私の場合は幸いにも早期の発見だったため、現状を維持しつつ少しずつボリュームを取り戻すための薬を処方してもらうことができました。治療を始めて数ヶ月、最初は抜け毛の量に一喜一憂していましたが、次第に産毛が太くなり、鏡を見たときの絶望感が「これなら大丈夫だ」という確信に変わっていきました。薄毛のタイプを知ることは、自分の弱点を知ることでもあります。私の場合はM字という明確な進行パターンがあったからこそ、その部分に重点を置いたケアを迷いなく進めることができました。あの時、勇気を出して自分の生え際の変化を正面から受け止めたことが、今の自分を支える自信に繋がっています。もし、鏡を見て少しでも額の形が変わったと感じているなら、それは身体からの貴重なサインかもしれません。分類を知り、己を知ることで、不安は具体的な対策へと昇華されるのです。
鏡を見て気づいた額の生え際から始まる薄毛の兆候