鏡を見るたびに深くなる、ため息。三十代半ばを過ぎたころから、シャンプー後の排水溝に溜まる抜け毛の量が明らかに増え、髪をかき上げた時の指通りのスカスカ感に、静かな恐怖を感じていました。分け目はくっきりと白く、全体的なボリュームも失われ、実年齢よりも老けて見られることが何よりも辛かったのです。市販の育毛剤を片っ端から試し、髪に良いというサプリメントを飲み続けても、目に見える変化はありませんでした。そんな私が「髪育注射」という言葉に出会ったのは、インターネットで解決策を探し続けていたある夜のことです。頭皮に直接注射をする、という行為には正直、恐怖心がありました。痛いのではないか、副作用はないのか。不安な気持ちが頭をよぎります。しかし、ウェブサイトに掲載されていた症例写真には、かつての私と同じように悩んでいたであろう女性たちが、生き生きとした髪を取り戻し、笑顔を浮かべている姿がありました。その写真を見た瞬間、私の心は決まったのです。これ以上一人で悩み、時間を無駄にするのはやめよう。専門家の力を借りて、本気で自分を変えよう、と。カウンセリングでは、医師が私の不安な気持ちに寄り添い、治療の仕組みや考えられるリスクについて、時間をかけて丁寧に説明してくれました。そして迎えた初めての治療日。緊張でこわばる私に、看護師さんが優しく声をかけてくれます。実際の施術は、想像していたような激しい痛みはなく、チクチクとした軽い刺激を感じる程度。時間もあっという間でした。数回の治療を終えた今、私の髪は確実に応えてくれています。抜け毛は減り、根元から立ち上がるようなハリとコシが戻ってきました。何よりも変わったのは、私の心です。自信を取り戻し、人の目を気にせず笑えるようになったこと。髪育注射は、私の髪だけでなく、くすんでいた人生そのものに光を灯してくれた、勇気ある一歩だったのです。