抜け毛が増えるとすぐに「自分はAGAではないか」とパニックになりがちですが、人間の髪の毛は毎日五十本から百本程度は自然に抜け替わるものであり、そのすべてが異常というわけではありません。正しい判断を下すためには、まず一時的な抜け毛と進行性の脱毛を見分けるための「質的変化」に注目する必要があります。最も一般的な勘違いは、シャンプー時の抜け毛の数だけで判断してしまうことです。秋口などは季節の変わり目で動物の換毛期のように抜け毛が増えることもありますし、ストレスが一時的にかかった際にも抜け毛は増加します。本当に警戒すべきは、抜けた毛の「形」です。AGAの影響を受けている場合、抜けた毛の根本、つまり毛根の部分がマッチ棒の頭のようにふっくらとしておらず、細く尖っていたり、目に見えないほど小さかったりします。これは毛母細胞が十分に栄養を取り込めず、毛が成長を終える前に強制的に抜け落ちているサインです。また、抜けた毛の中に短くて細い毛、いわゆる「成長途中の毛」が目立つようになれば、ヘアサイクルが極端に短縮されている可能性が非常に高くなります。さらに、帽子をよく被るから薄くなる、皮脂が多いから抜ける、といった俗説も判断を誤らせる要因となります。これらは頭皮環境を悪化させる要因にはなり得ますが、AGAの直接的な原因ではありません。AGAの判断において本質的なのは、髪を育む「土壌」である頭皮の硬さや血流の状態よりも、遺伝によって規定された「ホルモン感受性」です。皮脂を丁寧に取り除いても、遺伝的なスイッチが入っていれば薄毛は進行します。正しい見極めのポイントは、部分的な密度の低下が数ヶ月以上にわたって継続しているか、そして以前の自分と比べて前髪のセットのしやすさが明らかに変わったかという実感を大切にすることです。髪が細くなると、隣り合う髪との間に隙間ができ、光が当たった時に地肌が輝いて見えるようになります。このように、数という量的な指標ではなく、太さや立ち上がりといった質的な指標に目を向けることで、より正確な現状把握が可能になります。迷ったときは、古い免許証やパスポートの写真と現在の自分を並べてみてください。そこに明確な「後退の歴史」が刻まれているなら、それはもはや勘違いではなく、事実としての判断を下すべき時なのです。
勘違いしやすい抜け毛の常識と正しい見極め方のポイント