アパレルショップで働く私にとって、ヘアスタイルはファッションの一部であり、自分を表現するための大切なツールでした。しかし、30代半ばを過ぎた頃から、ふと鏡に映る自分の分け目が、以前よりくっきりと、そして広くなっていることに気づきました。最初は気のせいだと思おうとしましたが、美容室の明るい照明の下では、その現実は隠しようもなく、美容師さんとの会話もどこか上の空になってしまいました。その日から、私の悩みは始まりました。分け目を隠すために、トップにボリュームが出るように必死でブローし、ハードスプレーで固める。風の強い日は、髪が乱れるのが怖くて外出するのも億劫になりました。お客様と接する時も、頭上からの視線が気になって、心から笑顔を作ることができませんでした。そんなある日、長年の付き合いになるお客様から「最近、少し疲れてる?髪型、前の方が元気に見えたよ」と優しく声をかけられました。隠そうと必死になっている私の姿が、かえって疲れた印象を与えていたのです。私はハッとしました。このままではいけない。悩みを隠すことにエネルギーを使うのではなく、きちんと向き合おう。その日、私は勇気を出して、女性の薄毛を専門とするクリニックの予約を取りました。診察の結果は、加齢とストレスによるホルモンバランスの乱れが原因の「びまん性脱毛症」でした。原因がはっきりと分かっただけでも、心が少し軽くなりました。医師の指導のもと、私は治療と並行して、生活習慣の改善を始めました。大豆製品を積極的に摂り、夜更かしをやめてアロマを焚いて眠る。休日はヨガで心と体をリラックスさせる。そして、何より大きかったのは、髪型を変えたことです。美容師さんに悩みを正直に打ち明け、分け目が目立たない、トップにふんわりとボリュームの出るショートボブにしてもらいました。すると、驚くほど気持ちが軽くなったのです。髪が劇的に増えたわけではありません。でも、悩みを隠すのではなく、受け入れた上で前向きに対処する。その姿勢の変化が、私の表情を明るくしてくれました。今では、分け目を気にすることなく、心からファッションと仕事を楽しんでいます。分け目の悩みは、私に自分自身を大切にすることを教えてくれた、大切なきっかけだったのかもしれません。
私が分け目のはげと向き合い自信を取り戻した話